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ヨーロッパから見る、日本のインテリアの未来

今回は、アクタスから野口さんをゲストに迎えて、ヨーロッパ家具についてインゾーネスタッフが対談しました。野口さんはアクタスの前職ではヨーロッパで家具ディーラーをしていた経験を持っています。ヨーロッパのインテリアに対する価値観、日本のインテリアに対する価値観から、"これからの日本そして札幌に求められるインテリア"をインタビューしました。

Yチェア

CH24:通称Yチェア
デザイナー:Hans J Wagner ハンス ウェグナー
製作年:1950年
製作:カール・ハンセン(デンマーク)

独創性と普遍性が宿る優雅なフォルム。温もりある素材感、そしてやさしい座り心地。
中国椅子をモチーフとして生まれたYチェアは、ウェグナーの代表作として最大のロングセラー製品である。

野口:
このYチェア、一般的にもすごく評価の高いイスです。私もこのイスは素晴らしいと思っています。特に素晴らしいのは"60年近くもみんなに買ってもらっている"ということです。
S :
と、いいますと?
野口:
アクタスでもイスや家具をオリジナルでデザインしますが、2年販売し続けるのもやっとだったりします。ハンス・ウェグナーの作品でも、2年しか生産されなかったチェアとかもありますし。
S :
2年で生産終了...。やっぱり販売し続けるって難しいんですか?
野口:
結局はトレンドでしょうね。当時は技術が追いつかなかったってこともあるでしょうし。でも寿命の短かったデザインの中でも、根強い人気のものもあります。ま、それは例外として。それに比べてYチェアは60年もの間、国内だけじゃなく世界中からいろんな人に買ってもらっている。時代も変わったり、ニーズや市場もぜんぜん変化してきているのに、デザインだけは全く変わらない。アートピースとしての価値ももちろんあるかもしれませんが、純粋にデザインの寿命の長さに驚きます。
S :
"Yチェアを買いたい"というお客様は、どういうところに惚れるんでしょうね。
野口:
まずはプロポーションでしょうね。職人の技術が作るデザイン、曲げ木のカタチ...。あとはエピソードとかでしょうかね。Yチェアはデザインから時代背景まで、語れることが多い。
S :
確かに...。Yチェアの生まれる国の背景や、デザイナーの哲学が、よりYチェアをグッドデザインたらしめているように見えます。このイス1脚をとっても、デザインの価値観が見えてきます。アクタスとして日本に広めたい価値観も、そういうところでしょうか?
野口:
やっぱり価値観が一番広めたいところです。歴史を振り返っても、デンマークが農業国だったことも価値観の背景の一つではないかと。20世紀前半のバウハウスの流行があって、世界的に工業化の流れにあった。でもデンマークにそんな工業化できるほどのスキルがなかったんです。そこでどうしたか?木を使った。職人とデザイナーが一緒に頑張った。そうした時代的背景もデザインにとって重要ですね。
S :
やっぱり国によって、時代の状況によって生み出されるものが違うんですね。ちなみに、野口さんが好きなヨーロッパの国って、どこですか?
野口:
うーん...。まずはクリニアンクール。と言う町。パリらへんですよ。そこではガラクタ屋が集まって一つの街を形成しています。
S :
へぇ、街を...。ガラクタ屋って言われるとアレですけど、ちゃんと商業的に街を形成しているんですね。確かにパリっぽい(笑)
野口:
あとはコペンハーゲン。
S :
あ、いいですね。北欧って感じ。僕ミーハーなもんで、好きです。行ったこと無いけど。(笑)
野口:
そこはフリマが盛んですね。たぶん、イメージどおりの国ですよ。文化的にも、"良いものをつくろう"というのが当たり前なんです。だからデンマークの家具はいいものばっかり。
S :
それにしても、チェアが8万以上って...。高いような気がしませんか?
野口:
そうかもしれませんが、販売するときは、バックグラウンドを説明したりすると、お客様も理解してくれますね。8万払う価値はある、と。そしてあとはライフスタイルの提案にもつながりますね。アクタスでも、デザインだけじゃなく、価格、耐久性も大事だということは肌で感じています。そして日本人が求める"家具のクオリティの高さ"も重要です。
S :
そうですね。日本人としては"もっと安く"そして"安全で丈夫"でないと...。
野口:
でも、ヨーロッパの家具って、最初から"永く使うことを前提"に作られています。日本人って、"新品が長持ちする商品が丈夫な商品"って思ってるような気がしますが、本当は"経年変化を愉しめる"ような商品のほうが、使っていても愛着が出るし、そういう所有している楽しさという意味で長持ちする。そしてそういう家具たちは、補修されて長生きする。ここが大事なんですね。私がヨーロッパで仕事していたときは、たくさんの"傷だらけの家具"を目にしました。例えばチェスト。ドロアーが人の手で取り替えられていたり、傷が補修されている跡がわかるんです。"ああ、大事に使ってたんだなあ"と。
S :
それは素敵なことですね。僕なんかは、家具を直すテクニックもないし、"壊れたらどうしよう"だなんて考えて買ったりしないですね...。
野口:
そんなにたいそうなテクニックは必要じゃないんですよ。要は、"直してでも大事に使う"そういう考え方が、ヨーロッパのマーケットには根付いているんです。
S :
そういう価値観って、見直されてきてますね。特に東日本大震災以後、"今までの消費社会に一石を投じる"という論調もメディアに取り上げられるようになりましたし。そういえば、ヨーロッパって日本ほど地震が無いって聞きますけど、家具のデザインにも関係あるんですか?
野口:
あります。それこそチェストなどの収納家具って、脚がついてます。それも"ちょっとゆすれば壊れそうな"くらいひ弱な脚が。でもデンマークの家具って、そういうのが魅力みたいです。日本で"デンマークらしい家具がほしい"というお客様にはちゃんと説明しますね。"デンマークでは地震が少ないので、耐震を考慮されていません。揺れたら壊れるかもしれませんよ、それでもいいですか?"って。説明した上で、リスクを負う人だけが買います。
S :
いいとこ悪いとこがあるんですね。ところで野口さんって、やっぱりデンマークの家具が好きなんですか?
野口:
デンマークに限らないですよ。それこそヨーロッパだけじゃなく、アジアの家具でも"良い"と思える家具は世界中に沢山ありますからね。住宅がすべてじゃないとは思いますけど、1日の3分の1を家に居ると思ったら、家の中は充実していたいとは思いますので。好きな家具に囲まれているのは好きです。私もヨーロッパでの仕事が自分の考え方に影響してますよ。さっき、価値観が見直されているという話がありましたが、いろんな会社を見渡してると、日本では業種問わず"発行したいメッセージが同一化"してるんじゃないか?ということもわかってきますよね。
S :
同一化?
野口:
そう。私たちはアクタスとしてライフスタイルを提案してきましたが、最近はアパレルでも一緒じゃないですか?着る服からライフスタイルを、って。それこそ車だってそうかもしれない。他にも雑貨だったり住宅にいたるまで。一つの価値観の中で日本が変わろうとしているのかもしれません。
S :
日本人が、豊かさの意味を見直し始めた、と。
野口:
そうです。デンマークなんかは、かえって"モノが貧しい"国です。良いデザインができる土壌って、そういう国柄も影響しているはず。そもそも農業国ですし。
S :
そうなんですか。
野口:
はい。貧しいからこそ、"大事につかおう"と自然に思えるんだと思います。今、日本は物質的には豊かじゃないですか。何でも買える。それって、人生の豊かさとは違うことなんじゃないでしょうか?
S :
そっか...。今の日本人は、"便利なもの、豊かなもの"ばかりが購入対象。なんでもかんでも消費しようって考えちゃってますね。インゾーネが大事にしたい価値観は"枠にとらわれない自由な感性"と思ってるんですけど、"貧しいからこそ良いものづくり"という北欧の価値観は非常に参考になります。
野口:
でも、日本はヨーロッパになる必要はないんです。そもそも違うんだし。私たちにできることは、ヨーロッパの価値観を紹介して、価値を見出すことではないか、と。
S :
そうですね。札幌なら札幌、地域柄もあるでしょうし。札幌でもそういう価値観を輸入して、"より良いもの"を購入していただけるようになってほしいです。売れればいい、じゃなく。売ったあとの"価値"こそが、僕らの伝えたいメッセージなんですよ、と。
野口:
家具...売れなくなっちゃいますね(笑)
S :
それ言いますか?(笑)
野口:
でも私たちが発信したいメッセージって、そういうことでもありますよね。
S :
まぁ...そうですね。"より良いものを買ってくれるお客様が増える"ことが何より嬉しいことですよ。
野口:
そうですね。
S :
今日はありがとうございました。
野口:
こちらこそ、ありがとうございました。

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