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プロフェッショナルな人のテツガク - さまざまな業界で活躍されている人から学ぶライフスタイル

2013.07.20

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#02 本との"予期せぬ出会い"を楽しんでいただきたくて

「食」に関する本を集めた"おやつ屋さんの本棚"ともいうべき六花文庫が、帯広の六花亭本店3階から札幌に移設されたのは2004年。前年に入社した日浦智子さんも「本といっしょに」転勤しました。それから9年間、蔵書は6,000冊から8,000冊に。日浦さんが選んだ本が、月に10冊から20冊加えられています。

六花文庫 日浦智子さん

帯広本店にあった六花文庫の担当に採用され、2003年に入社。2004年4月24日、真駒内六花亭ホール店の完成と、それまでの店舗だった旧真駒内店の六花文庫へのリニューアルに合わせて、札幌へ。六花文庫の管理・運営、真駒内六花亭ホール店で行われるコンサートの運営、六花亭文化広報部としての仕事など、本や文化の周辺でさまざまな仕事に携わっている。好きな作家は、須賀敦子。

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書籍の仕事がしたかった


大学では美術関係の研究室にいました。学芸員の資格は、取れるなら取っておこうというくらいの気持ちで、どちらかというと美術より書籍のほうを仕事にしたいと思っていました。子どものころから"本の虫"で、六花亭を希望したのも、六花亭が発行している十勝の子どもたちの詩集『サイロ』に携わりたいと思ったからです。昭和35年から50年以上、毎月出している詩集で、とても好きだったんです。


ところが面接のときに、『サイロ』の編集は六花亭ではなく、十勝の小中学校の先生方が有志でつくっている「サイロの会」でされていると聞いて。編集に携わるためには十勝の学校の先生にならなければいけないけれど、そういうわけにもいきません。そうしたらちょうどタイミングよくというか、六花文庫を帯広から札幌に移設したいという思いが会社にあって、けれど当時は担当者が誰もいない状況だったので、それで私にと採用されました。


1年後には札幌に移って、夏はツタの剪定や水やり、秋は落ち葉掃き、冬は雪かきと、館内の毎日の掃除はもちろん、季節の力仕事もこなして今日まで来ました。そう、仕事は掃除から広報まで、でしょうか(笑)。でも、いまになってみると、六花文庫がなかったら自分はどうなっていたか、本当に想像がつかないですね。



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10年20年と読み継がれる本を、文庫に


文庫での仕事は、本を入れる・読む・紹介する・管理する、それから先ほどお話しした建物の維持管理と接客。学芸員の立場では「六花ファイル」というアートボックスの仕事もあります。「六花ファイル」は、お菓子の詰め合わせに使う六花亭の花柄の箱に収まる作品を全国から公募するもので、ガラス作品もあれば彫刻や絵画もあるノージャンルのアート。鑑賞者自身が箱のフタを開けてアートを楽しむという趣向です。


文庫には新たに蔵書となる本のほか、社内から「資料として使えるかどうか調べてほしい」という本が寄せられてきます。1日10冊から、一番多いときで20冊は読んだでしょうか。全部をきっちり読むのではなく、資料として使えるかどうか必要な部分だけを拾い読みするので、可能なんです。拾い読みは会社に入ってから身につけましたけれど、だんだんやっていくうちに、ここらへんに必要な記述が眠っていそうだぞ(笑)というのがわかってきましたね。


文庫に入れる本の選定基準は、六花亭の食に対するスタンスそのままです。例えば「ブームは追わない」ですとか...。


「食はファッションではない」というポリシーが六花亭にはあります。ブームで去っていく食べ物や一過性のことは本来の食文化ではないと思っているので、話題性だけで本に飛びつくことはありません。入れている本は食文化だけでなく、歴史物や実用書、専門的なレシピ本や小説もありますが、その本が10年後も20年後もちゃんと読み継がれているかどうか、そういう目で見て選んでいますね。


通勤時のプライベートな読書が文庫の蔵書に発展することもあります。読むのは海外物から日本のもの、フィクションからノンフィクションまで。なんでも乱読です。「食についての本です」と全然謳っていない本の中に、すごくいい「これは素晴らしいな」っていう食べ物のシーンが出てきたり、知らなかった地方の食文化のことが書かれていたり。そんな記述を見つけて、これはご紹介したいなと思うと文庫の1冊に加えています。



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朗読会や本の交換会で、本と人の縁を結ぶ


いらっしゃる方は、お散歩の途中に寄ってひと息つくご近所の方とか、レシピを探しにいらっしゃる主婦の方、資料を探しに来られるプロの方。意外に道外から旅行のときに寄られるお客さまも多いですね。よくいらっしゃる方の中には、職員やほかのお客さまがいても「一人になれる場所」と思ってくださる方がいて、その雰囲気は壊したくないなと思っています。だから、時計も置いてないんですよ。


年4回の朗読会では、春夏秋冬それぞれの季節に合ったテーマで、食べ物が出てくる小説やエッセイ、詩などをプロの朗読グループの方3〜4人に読んでいただいています。聞きに来られるお客さまは50名くらい。「私の暦(こよみ)に入っているの」とおっしゃられて、この朗読会で季節を感じていただいているという、すごくうれしいお言葉も頂戴しています。


もう一つ、「本のばくりっこ」という企画もしていて、こちらは春と秋の年2回。食べ物の本に限らず、どんな本でもよいので、「もう読まないな、でも誰かほかに読みたい人がいたらどうぞ」というような本をここに持ち寄っていただいて、例えば3冊持ってきてくれたら、集まった本の中から3冊まで持って帰っていいよ、と。お客さま同士がここを基点に本の交換をするんです。


楽しいですよ「ばくりっこ」。男性も女性もいらっしゃいますし、若い方もお年を召した方もいらっしゃるので、みなさん、本のラインナップが全然違う。ですから、ふだん自分では全く読まない本などがあって、そういうところを楽しんでもらいたいな、と思います。絶対に自分じゃ買わないけれど、交換ということならちょっと挑戦してみようかな、というように。


「ばくりっこ」がそうであるように、この六花文庫で、本との予期せぬ出会いを多くの方に楽しんでいただけたらな、そう思っています。


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編集:Mammy Pro 文:佐藤まゆり 撮影:小森学(Volanti)

六花文庫

六花文庫

六花文庫は外壁をすべてツタに覆われた建物で、館内の約7,8000冊の書籍はすべて「食」の本で保管、一般閲覧に供しています。貸し出しはしておりませんが、館内にて自由に閲覧していただけます。

〒005-0012 札幌市南区真駒内上町3丁目1-3
http://www.oda-kikin.com/

T&F:011-588-6666
開 館:10:00~17:00
休館日:日曜日・月曜日


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